オーケストラ工場から奏でられる
ハーモニーでお客様に満足と感動を

大型マシニングセンタによる加工部門は「コントラバス」、汎用機械による加工部門は「バイオリン」。 工場内の各部門に楽器の名称を付けて呼び合う「オーケストラ工場」。「モノづくりのフィールドにハーモニーを」 を企業メッセージとして伝える株式会社石井機械製作所は、全社員がプロとしてリズミカルにモノづくりを実践。 オーケストラ工場から奏でられるハーモニーで多くの顧客に満足と感動を届けています。

6パレットチェンジャ仕様の横形マシニングセンタも2台導入し、柔軟な生産体制を構築【左】
高精度に加工されたチタン製の自動車部品【中】
石井社長（前列左から3人目）、新藤製造部長（同4人目）と社員の皆さん【右】

　織物の産地として知られる栃木県足利市で、1888年に織物機械の木製部品の製造で創業した石井機械製作所は、 自動車や産業機械分野の省力化装置・治工具の設計・製造を経営の柱として昨年創業130周年を迎えました。 2011年に現会長で父親の石井金吾氏から経営を引き継いだ石井大洋社長は「不協和音があってはいいモノづくりはできない。 全社員がプロとしてリズミカルにモノづくりを実践することを大切にしたい」と自社をオーケストラ工場と呼ぶ理由を説明します。 オーケストラ工場は、楽器演奏を趣味とする社員の発案によるもので、指揮者である石井社長のもとに一致団結し、 部門間の横のつながりが一段と強化されました。

オーケストラ工場の“指揮者”を務める石井大洋社長

航空機産業への新規参入の難しさを体感

　石井社長は、社長就任を機に新たに航空機産業への本格的参入を決断しました。 その理由を「経営基盤の拡充に加え、新たな挑戦により従業員の士気を向上させる狙いがあった」と明かします。 航空機産業への参入は、自身が1997年に同社へ入社した時からの夢として抱き続け、 2008年には航空宇宙産業に不可欠な品質マネジメントシステムJISQ9100の認証を取得するなど着々と準備を進めてきました。 とりわけ「2009年の高精度3次元測定機“レーザートラッカー”の導入は、航空機産業からの新規受注獲得に大きな決め手となりました」と振り返ります。 「最初の3年間は営業で訪問してもほとんど相手にされませんでした。そこで当時は県内で導入実績がほとんど無かった レーザートラッカーを自社設備としてホームページで紹介すると直後から反応が変わってきました。 最初の1社から受注獲得すると、その情報を聞きつけた他社から次々と声が掛かるようになりました」と航空機産業への新規参入時のエピソードを語ります。 さらに「壁はそれだけではありませんでした。航空宇宙関連の仕事は5軸加工機などの高機能設備と難削材などの高度な加工技術が必要なことから、 社員の多くが参入を不安視していました」。そこで、常にチャレンジを信条とする石井社長は 「“できるかできないか”ではなく“やるかやらないか”だ」と強い気持ちで社内を鼓舞し続けました。
　2013年の国産ジェット旅客機の胴体部分の組立用治具製作から、最近ではチタン合金など 難削材のジェットエンジン部品の加工をはじめ着々と実績を積み上げ、技術力を向上させてきました。

マザック機による高精度部品加工

マザック機が並ぶ「M Factory」で次のチャレンジを

　同社の加工現場では、マザックの最新5軸加工機や複合加工機が活躍しています。 たとえば「自動車部品のハブ加工では、従来マシニングセンタとNC旋盤の2台で計20時間掛かっていたのが、 INTEGREX i-630V 1台では14時間で完結し、工程集約による治具製作や段取り時間の削減など 生産リードタイムを30％短縮できました」と新藤浩光製造部長はマザック機の導入効果を挙げます。 さらに「マザトロールCNC装置は、対話式入力なので加工プログラムの作成が簡単で、 次もマザトロールを希望するオペレータが多い」と使いやすさも評価しています。
　昨年6月には、自社敷地内にマザック機が並ぶ「M Factory」を新設しました。 多面・5軸制御門形マシニングセンタVERSATECH V-100N、横形マシニングセンタHCN-6800、複合加工機INTEGREX i-630Vなど 計4台が稼働しています。「現在は半導体製造装置関連の大型部品を高能率に加工していますが、 将来は航空機の大型部品加工も視野に入れています」と語る石井社長には、M Factoryが奏でる次の楽曲が、 すでに思い描かれているようです。

マザトロールCNC装置はオペレータからも好評

2021年2月掲載
サイバーワールド57号より引用

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