CS（顧客満足）とES（従業員満足）で事業を拡大

「お客様の無理を聞いてなんぼ」を信条に掲げる株式会社ナカノテック（兵庫県尼崎市、中野貴之社長）は、 他社が敬遠する複雑形状の部品加工の依頼にも意欲的にチャレンジ、「常識では不可能と思われた仕事を可能にする」という姿勢で、 お客様との強い信頼関係を築いています。
また「社員がイキイキと働きやすいように」と、工場内の作業環境づくりも積極的に推進。 先代から培ってきた技術力を礎にして、お客様と社員の双方を満足させる取り組みを実践し、 さらなる事業の拡大を目指しています。

伊丹工場には18台のマザック機がずらりと並ぶ【左】
高精度に加工されたポンプ関連部品【中】
中野社長（後列中央）と社員の皆さん【右】

　ナカノテックは1974年に大阪市で創業。2004年に尼崎市に本社工場を移転し、2018年には伊丹市に新工場を建設しました。 現在は本社工場がレーザ加工事業、伊丹工場が切削加工事業を担当。このうち切削加工事業では長尺シャフトの加工と 複雑形状部品の加工を強みとしており、エンジンや工業用計測器、ポンプなどさまざまな業界からの仕事を受注。 とりわけポンプ関連部品の加工では多くの実績を誇り、無理難題にもこたえる同社の姿勢は、 世界有数のポンプメーカーからも絶大な信頼が寄せられています。
　前職がIT企業のプログラマーであった中野社長は1993年に入社、2008年に社長に就任しました。 家業を継ぐ際に決めたのは旧態依然とした「鉄工所」のイメージを変えることでした。 伊丹工場では社員の気分転換を促すため有線放送をBGMで流しており、空調の効きをよくするため天井高を低めに設定。 「設備機の自動運転中は立ったままではなく座る。その方が次工程をしっかり確認できる」という合理的な考えのもと、 設備機の前には椅子を設置しています。中野社長はプログラマーであった自身の経験を生かし、 工場の効率化を図るために生産管理システムの整備を推進。設備機ごとの稼働状況を可視化し、常に把握することで、 特急案件にも柔軟に対応できる体制を整えました。また、生産効率を高めるための設備投資も継続的に実施。 こうした考えのもと、現在同社には18台ものマザック機が導入されています。

理想の工場像について語る中野社長【左】
生産管理システムを積極活用し、効率的な工場運営を推進【右】

同社のビジネスモデルを支えるマザック機

　マザック機との出合いは1995年に遡ります。「複数社の製品を見比べる中、Uドリルを用いたΦ50ミリの深穴加工を 軽快にこなすマザック製CNC旋盤の姿を目の当たりにして『これは使える』と直感しました」（中野社長）。 以来、同社はマザック製CNC旋盤を積極的に導入しています。シャフトワークの工程集約のため、仕様はミル機能付きタイプを迷わず選択。 「同業者が敬遠するような長尺シャフトの難しい仕事にも、対応可能な体制を整えるためです」（同）。
　2003年には複合加工機「INTEGREX」を導入し、複雑形状部品の加工に本格参入。 「段取り時間、工程数などすべてにおいて従来よりも有利」と中野社長は導入効果を語ります。 「丸材から角物部品を削り出すなどの特殊加工も対応可能。計量器に使われる角物部品の加工では、 立形マシニングセンタに比べてリードタイムを25％削減できました」（同）。

働く環境の改善にも寄与するデザイン

　中野社長はデザインの独自性についてもマザック機を評価しています。「他社製にはない外観デザインは、実は1号機導入の時から 関心を寄せていました。独自の配色や形状は工場内に統一感を生み、職場環境改善や社員のモチベーションアップ、 企業ブランドの向上にも貢献しています。また、人間工学を取り入れたデザインや、操作のしやすいタッチパネル式のCNC装置は 若い社員に受け入れられています」（同）。実際、伊丹工場では多くの若手社員が笑顔で工作機械に向き合っています。
　理想の工場を立ち上げた中野社長の次の目標は、シャフト加工の業務拡大です。 「昨今、長尺のシャフトワークをこなせる設備を持つ同業者が減少している。この分野のチャンスは多い」（同）と明かします。 このような事業の拡大目標に加えて「社員のために、よりクリーンな職場環境の構築も大きな目標」と語る中野社長。 CS（顧客満足）とES（従業員満足）を両立させる同社は、新しい「鉄工所」のイメージを作り出していくでしょう。

銅などさまざまな素材の複雑形状加工を手掛ける

2021年2月掲載
サイバーワールド58号より引用

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