カム製品の世界No.1サプライヤーを目指す

回す、止める、位置を合わせる――。産業用機械の高精度かつ安定的なモーション・コントロールには、「カム」の力が必要です。 三共静岡製作所（静岡県菊川市、小川廣海社長）は、東京ドームおよそ４個分の敷地面積を誇る世界最大規模のカム専用工場。 カム機構を利用した各種位置決め装置の製造を手がけており、ここで生み出される製品は、 工作機械はもちろん自動車用溶接機や半導体搬送装置など、さまざまな産業用機械の動きを支えています。

大物部品の加工を担う、INTEGREX e-V【左】
複合加工機による工程集約で、部品加工の精度・生産性を向上【中】
八木本部長（後列左から3人目）と社員の皆さん【右】

　三共静岡製作所の親会社である三共製作所（東京都北区）は小川廣海社長の父親である良平氏が1938年に創業。 航空機やキャタピラ部品の製造からスタートしました。
　社内設備機器の位置決め装置の開発を手がける中、カム技術の奥深さと可能性に着目し、事業内容を位置決め装置の設計・製造へ次第にシフト。 1973年にはローラギアカム式固定位置決め装置を日本で初めて商品化しました。良平氏の先見性と熱意は 「日本製工作機械に採用されるローラギアカム式任意位置決め装置は、多くが三共製」（八木一樹 静岡製造本部本部長）という今日の実績に結実しています。
　三共静岡製作所は1981年に操業を開始し、2017年に分社化。任意位置決め装置「RollarDrive」をはじめ、ローラギアカムをコア技術とした さまざまな製品の生産を担っています。「お客様ファースト」を掲げる同社は、汎用品のみならず特注品も製造。 「これまで強みとしてきたプロダクト・アウトだけではなく、マーケット・インのものづくりで、顧客の期待に応え続ける」 （鈴木健吾開発部部長）ことを目標にしています。

同社の強みについて語る八木本部長（左）と鈴木部長

生産効率向上のための積極投資を継続

　同社にとって最初のマザック機は1996年に導入したINTEGREX 30Yです。「マザトロールプログラムの分かりやすさに惹かれた」（八木本部長）からでした。 以来、これまでに計42台のマザック機を導入。直近2年間でも「Sankyo Dream Factory」と名付けられた同社の最先端の工場に8台の本機と 2ラインの自動化システムを導入し、高効率な多品種少量生産体制の構築を推進しています。八木本部長は「まだ本格稼働前ですが、 従来の自動化システムと比較して稼働時間は40%向上しました。将来的には8台で年4万8000時間稼働、計250品目の加工が5人のオペレーターで可能となります」 と投資効果を強調します。
　生産性向上のため、同社は設備機器だけではなくソフトウェアの投資も積極的に実施しています。 自動化システムと同時期に導入した稼働監視・分析ソフトウェア「Smooth Monitor AX」はその一つです。 「まずはアラーム停止時間の分析から始め、稼働率のさらなる向上に努めたい」（同）と狙いを語ります。 さらには、新しいCAD/CAMソフトウェアの導入も構想中。加工プログラム作成とシミュレーションをオフィスで完結させることで、 設備立上げの工数短縮を目指しています。

Sankyo Dream Factoryに導入されたINTEGREX iシリーズのFMSライン【左】
Smooth Monitor AXを導入し、稼働状況の見える化を実現【右】

マザー工場として国内外拠点をバックアップ

　国内外の同社グループの中で最大規模である同社は「マザー工場」としての役割も担っています。 位置決め装置に組み込まれるコア部品の集中生産のほかにも、最先端加工設備の導入とその評価、人材の育成など、その役割は多岐にわたります。
　「最先端設備を使いこなす現場力と、ノウハウの継承に力を注ぐ」（同）と語るように、同社は国内拠点のみならず海外拠点の人材の受入・育成も担当。 受け入れた実習生には技能士資格を取得させるなど、長期的な視点で海外拠点の強化を進めています。
　「特にベトナム工場は、これからさらに伸びる。この拠点を担う人材を我々の手で育てていきたい」と意気込む八木本部長。 「カム製品の世界一のサプライヤーになる」という創業者の夢は着々と実現に近づいています。

2020年12月掲載
サイバーワールド60号より引用

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