「人が力、技術が力」を追求

「最初にしたのは、天窓を取り替えたこと。明るくて作業のしやすい場所で、誰もが働きたいはずですから」。 株式会社タチ製作所の舘まち子社長は、就任して初めての仕事をそう振り返ります。女性ならではの細やかさは、社内の美化運動を促進。 一方で最先端の機械設備の導入も意欲的に進めています。美化も設備導入も、お客様により良い品質の製品を提供するのが狙い。 その気持ちは「人が力、技術が力（HIGH TECH WITH HEART）」という理念に込められています。

2台合わせて計36パレットの自動化システムで24時間フル稼働を実現【左】
多種類のワークに対応するため240本ツールマガジンを装備【中】
舘社長（前列中央）、舘副社長（右から2人目）と社員の皆さん【右】

　タチ製作所の前身であるタチ商会は、1946年に名古屋市内で創業。1967年に株式会社化し、本社を清須市に移転しました。 現在の同社事業の２本柱は「部品製造」と産業機械等の「ユニット組立」です。部品製造事業では複雑形状のアルミ加工を強みとしており、 産業機械・昇降機・自動車業界から高い評価を受けています。
　このような強みに磨きをかけるため、同社が力を入れるのは「人」を伸ばす活動です。「社員の声を大切にしたい」と語る舘社長は、 2009年の就任以来、毎朝すべての工場に足を運びます。社員一人ひとりの体調把握はもちろん、狙いとするのは「社員が持つアイデアの汲み上げ」です。 実際、現場で交わした何気ない会話は、社内改善につながっています。また舘社長は「小集団活動」も積極的に推進。 全社員がチームに分かれて社内行事や地域貢献の取り組みを重ねています。職場の枠組みを超えて交流し、 コミュニケーションを活発にすることで仕事の整流化を促進しています。
　同社は社員個々のスキルを伸ばすために、技能教育への投資も意欲的に行っています。 その活動が実り、現在では約4割もの社員が特級技能士をはじめとする「技能士資格」を取得しています。
　これらの活動はいずれも、同社が掲げる「人」の力を大切にする取り組みといえるでしょう。

「社員の成長が何よりの楽しみ」と語る舘社長（右）と舘副社長【左】
社員の声は製造現場の設備投資にも反映されている【右】

「人」と同じく「技術」にも積極投資

　同社とマザック機との関わりは1969年に始まります。現在では16台のマザック機が活躍。同社が得意とする複雑形状加工の実現に貢献しています。 「製品ばかりでなく、迅速なアフターサポートなど、全幅の信頼を置いています」と、舘社長はマザックとの関係性を語ります。
　同社の「技術」の力を支えているのは、大胆な設備投資とそれらの有効活用によるノウハウの蓄積です。 近年では、設備強化のため省スペースマルチパレットストッカシステムMPP付きの「VARIAXIS iシリーズ」を2017年と2018年に立て続けに導入。 MPPは2016年のJIMTOF会場で実機を見てその場で購入を決定しました。｢機種選定は現場の意見を尊重します。必要であれば特注オプションの購入もためらいません」（同）。 現場の声に日々耳を傾けるからこそ成せる、即断即決でした。

機械稼働率を飛躍的に高めたMPP

　MPP導入を決めたのは、折からの増産対応に現場の社員が頭を悩ませていたからでした。多品種ワークを完全無人で連続加工することが導入の目的でした。
　当初の狙い通り、MPPは連日フル稼働の活躍を見せています。2017年の導入以降、機械稼動率は飛躍的に向上。2台で計50種類のワークを昼夜連続加工し、 1台あたりの機械稼働時間は最大で月520時間に達し、オペレーターの作業時間は40％減りました。さらにMPPの導入効果は、同社事業のもう一つの柱である 「ユニット組立」にも波及。部品加工の効率化により、ユニット生産量を8割以上引き上げることが可能となりました。
　同社はさらなる成長を目指すべく、部品加工事業の幅を広げることを模索しています。 「狙うのは難削材分野。アルミ・ステンレス加工で蓄えた技術を存分に生かしたいですね」（同）。 今後の設備投資も視野に、将来への展望を語る舘社長。その胸には「HIGH TECH WITH HEART」がしっかりと刻まれているようです。

複合加工機による複雑形状部品加工は同社の強み

2020年12月掲載
サイバーワールド58号より引用

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